「仕事を楽しみ、人生を楽しむ」

? 桝 幸雄

 

去る3月10日、大南先生を囲む食事会がありとても楽しいひと時を過ごさせて頂きました。その後本誌への寄稿のお話を頂き、私事で恐縮ですが、この機会に会社人生を振り返って見ようと思い本文を寄稿致しました。

振り返りますと、私の会社人生はとても楽しく幸せだった、と思います。 何故楽しく幸せな会社人生を歩めたのか? 考えると四つの要因に気づきました。

一つめの要因は、大南研究室に入れて頂いたことです。

大学3年迄私は真剣に勉強をした事が無くこのまま大学を卒業したら一生後悔すると思い、一年だけでも精一杯頑張ろうと大南研に入りました。皆に触発されて研究を進めるうちに、「勉強する、研究するって本当に楽しい!」と心から思う様に成りました。また実験・研究の仕方や解析方法、Fortranが身に着いた事もとても大きかったと思います。指導して下さった大南先生や院生の松田さん、そして坂根君等同期の皆様に心から感謝しています。

二つめは、入社した凸版印刷が真剣に取り組めば何にでも挑戦出来る自由闊達な社風で、思う存分仕事に取り組めたことです。

三つめは、人に恵まれた事です。私は学生時代も、凸版に入社後も社内・社外共多くの人にとても恵まれていたと思います。皆様に感謝しています。

四つめは、仕事にも恵まれた事と、時代というかタイミングも良かったのだと思います。

ここで担当した業務の内幾つか振り返って見ます。一貫性が無いのは受注産業の印刷業ならではと思っています。

入社後数年間は金融証券事業部の開発・技術として生産工程の合理化や、新しく始まった磁気通帳の開発等に携わり生産機器も設計しました。自動機械の設計は初めてでしかも納期切迫の為一発必中で完成させねばならず厳しかったですが、機械科卒業の意地で何とか成功させました。

同時に通帳やカードのカラー磁気テープの開発を行いました。1枚のカードに機能の異なる2枚のMTを貼りたいが、デザイン上黒いテープ2枚は許されない為でした。スペーシングロスの関係でMTのカラー化は困難と言われたのですが、蒸着技術を使い解決出来ました。今では発行される殆どの通帳・カードに使われています。

1979年には「日本初の双方向性番組をやりたい」との朝日放送からの依頼でTV番組の企画にも携わりました。番組では予め数百万枚のビンゴカードを配布しておき、生放送中に視聴者とやり取りをする、というものです。その為には、ビンゴが成立した時に歌手が歌っている2分間でカードの特定が必要です。当初は30分も掛かりましたが、25の順列組み合わせを、25個から5個ずつ抜き出した5枚のカードの順列組み合わせを行うプログラムを作成し何とかクリアして本番に間に合わせることが出来ました。

その後ICカードの開発に取り組みました。ICカードの基本特許を持っているフランスのイノバトロン社やドイツのジーメンス、スイス銀行等に行き調査や意見交換をしました。帰国後本格的に開発をスタート、その後総合研究所の力も借りて試作品を作成、2社に評価テスト品を出荷しました。ただその直後の1989年末に移動となり後を委ねる事になりましたが、ICカードはその5年後くらいから徐々に立ち上がり2001年に交通分野で、2004年には銀行系でICカード化が始まり、現在に至っています。

移動により初めて印刷製造に携わり、版下・製版・印刷部門の課長・部長の後、1997年には生産管理も担当しました。版下・製版部門は其々数百人を擁する熟練技術者の職場でしたが、課長として着任した直後からの数年間はその業務が急激にコンピュータ化されて行く激動期で、しかも製造部門とシステム開発部門を統括していた事も有り、思い通りにシステム設計が出来た事はとても幸運でした。

製版担当時には2テラBの大容量メモリーを設置、カラー分解データを全てDB化し自動で画像修正するシステムを開発(顔を自動認識し自動で肌色を良くする。。。等々)、更には文字・画像データの統合と自動配信及びそれに連動した日程管理システムも構築し、当時としては最先端のDTPとDBをNW統合したシステム工場を構築しました。

1999年に本社生産技術研究本部の部長として移動、2001年には本社に新設する事になった内部監査室を立ち上げました。しかし乍ら業務監査だけの「内部監査室」では面白く無く何としても経営迄含めた監査が出来る「経営監査室」にしたいと思い2年後に漸く実現出来ました。

経営監査室では子会社を含め全部門の経営全般について調査分析し、問題点の指摘だけでなく可能な限り課題の解決案を提示する様にしました。今では20数名の部門になり将来を担う若い人材も頑張っています。

その後役員を4年、相談役を2年勤めリタイアしました。

私は入社以来「仕事を楽しむ!」を信条に、積極的に新しい事に挑戦しました。同時に関連技術は勿論経理財務を始め幅広く勉強し何時でも退職できる準備をしていました。それが後々様々な職場においてとても役立ち、また沢山の方々に支えられ、結果として43年間本当に楽しい会社生活を全う出来た事は感謝に堪えません。 (終わり)

 

★最後に凸版印刷について簡単に紹介したいと思います。

興味のある方はお読み頂ければ幸いです。

凸版印刷は、1900年創業、概略売上高1兆5000億円、従業員50,000人の会社です。

事業内容は以下の通りです。

金融証券分野では、ICカードを始め商品券など種々の印刷物の他、各種データ処理業務や偽造防止用ホログラム等の開発・製造を行っています。

出版・商業印刷分野では、カタログや雑誌・書籍等様々な印刷(含電子出版)や、子会社の東京書籍やフレーベル館では教科書等の出版も行っています。また1970年には世界初の日本語自動組版システムを開発し1997年には日本初の地図検索サイト「Mapion」を開設、現在も多岐にわたるシステムの開発を進めています。

生活・産業分野では、軟包装材やプラスチック容器、また酒類等の紙容器や化粧箱等の他、壁紙や床材等の建装材、更には高機能バリアフィルム・太陽電池関連部材等を開発・製造しています。

エレクトロニクス関連では液晶カラーフィルタ等のディスプレイ部材及びフォトマスクや高密度多層IC基盤等半導体関連の設計・製造を行っています。

その他ユニークな処では、子会社の「トータルメディア開発研究所」では九州国立博物館を始め国や地方自治体及び企業等で多数の博物館・資料館等の展示企画も行っています。

また文化遺産のデジタルアーカイブ事業として国内外の絵画や建築物をVR映像化し、文化財の当初の姿を高精細かつ色彩も忠実に再現、恰も実物に触れられるかの様な空間を実現しています。印刷博物館内の「VRシアター」や東京国立博物館内の「TNM&TOPPANミュージアムシアター」で是非一度ご覧下さい。

その他「印刷博物館」やクラッシック音楽専用の「凸版ホール」等も運営していますので、是非一度行って見て頂ければ幸いです。

*写真は、2005年3月アメリカ出張時、休日にグランドキャニオンで(左から2番目)

 

機友会ニュースデジタル版第37回 桝 幸雄 氏(昭和47年機械工学科卒業)         「仕事を楽しみ、人生を楽しむ」