蟲の怨念を調査

ロボティクス学科 松野 孝博 助教(平成24年卒)

いつもお世話になっております.理工学部ロボティクス学科ソフトロボティクス研究室(平井研究室)の松野孝博です.おかげさまで,今年度も立命館で助教をしております.本当にありがとうございます.

皆様は今年の夏はいかが過ごされましたか?おそらく自粛に在宅で,ほとんどの方が家で過ごされることになってしまったと思います.そして,普段より改めて家に多くいることで,自分の家に対して新しい発見があったのではないでしょうか.私の場合,日中の自室やベランダに虫が多く出現しているという,知りたくない事実を知ってしまいました.

私のアパートは恐ろしいほど虫が大量に出現します.それも大型の虫です.大ムカデ,ゲジゲジ,アシダカグモ,ヤママユガ,スズメバチなどが容赦なく出現します.引っ越してきた時の私は,絶叫しつつ様々な強力な殺虫剤を用いて彼らを葬りましたが,彼らが駆逐されることはありませんでした.ちなみに,大型の虫があまりにも闊歩しているせいか,ハエやゴキブリは一度も見たことがありません.有難いような,有り難くないような・・・

そして夏になると,我が家は最高級のホラーハウスとなります.図1や2に示す,黒くて硬くて大きな武装した虫たちが大量発生します.“家の近くにいる”とかではありません.アパートの廊下で堂々と待機しています.奴らは突然現れて,そして突然姿を消していきます.

図1 アパートに出現したクワガタ① 全力でこっちを威嚇してきます.

図2 アパートで出現したクワガタ② 影がエモいです.

しかし,解せないことがあります.それは,私が住んでいる建物にだけ多く出現している気がするということです.例えば,私の住んでいるアパート群の中で,私の住んでいる建物が森から最も遠いところにあります.にもかかわらず,他の建物よりも多く出現している感じがします.また,大学から自宅まで,他にも多くの木や街灯などがありますが,他では見かけたことがありません.

このような条件下で,なぜ私の家ばかりにクワガタやカブトムシが出現するのか,正直なところ,心当たりが一つあります.私は今までに多くの小さな命を奪ってきました.きっと彼らの成仏されない怨念が,クワガタやカブトムシとなって私に復讐しに来ているのでしょう.ただ,何の根拠もなく超常現象に結び付けて解決した気になることは不適切です.そこで今年の夏は,クワガタやカブトムシが私の所に多く発生する理由を探ってみたいと思います.

まず初めに,クワガタとカブトムシの発生数を具体的に数えてみたいと思います.探索場所は,大学から自宅までの道と,アパート群の各廊下とします.探索といってもじっくり探すことはせず,それぞれの場所を一度だけ通って,見つけたら日時と場所を記録します.

まず,日付と私が発見した数の関係を図3に示します.このグラフでは午後六時時点での天気,気温,湿度,降水量も合わせて併記しています.今年の夏は合計で33匹見つけました.クワガタ・カブトムシは真夏というイメージがありますが,少なくとも今年のデータからはその傾向を確認できません.むしろ6月末ごろには出現しており,梅雨明けの日をピークに最も出現していることが分かります.予想している出現ピークと,実際のピークがずれているので,“突然現れ,突然消えていく”という感覚になるのかもしれません.これに関しては来年も調査が必要です.また,今年の夏は一度もカブトムシのオスが現れませんでした.それどころか,クワガタ・カブトムシのどちらにおいても,なぜかメスの方が多く出現しています.人間のメスの大量発生なら大歓迎ですが,ムシなので無視したいと思います.

図3 日付ごとのクワガタ・カブトムシの発見数

次に,場所ごとに発見数をまとめたものを図4の橙の棒グラフに示しています.私のいるアパート群は1号館・2号館・3号館(仮名)の3館で構成され,私は2号館に住んでいます.図4の“その他”とは,大学から自宅までのすべての道のことを示しており,最も大きい捜索範囲を示しています.にもかかわらず,その範囲で私が見つけられたのはたったの1匹だけでした.またアパート群内においても,私の住んでいる2号館での発見数が19匹と,他の倍以上の発見数を確認しました.

図4 場所ごとのクワガタ・カブトムシの発見数

私の家にだけクワガタとカブトムシが多く現れることを客観的に確認したので,ここからその原因について考察していきたいと思います.予想される一つ目の要因は,発生場所と考えられる森からの距離ですが,私の家は最も遠いため該当しません.もう一つ考えられる大きな要因は,アパートの廊下に設置された電灯の紫外線量です.皆さんもご存じの通り,夜間の虫は紫外線に寄ってきます.もし各館の電灯の紫外線量に差があれば,当然,虫の発生数にも差が生じるはずです.

そこで,図5に示す紫外線と可視光の計測器を用いて,各館の電灯の紫外線量を計測します.図5の計測器を電灯に近づけ,紫外線(波長350nm)の照度と,単位可視光(波長555nm)照度あたりの紫外線照度を計測しています.電灯は各館に複数あるため,すべて計測しその平均を用います.

図5 紫外線照度の計測器

これを持って夜の街灯の下で私が計測します.虫が怖いという話をしましたが,傍から見たら私のほうが怖い存在かもしれません.

計測した結果を図4に紫と水色の棒グラフで併記しました.図4より,紫外線照度と単位可視光当たりの紫外線のどちらにおいても,2号館は他よりも少ないことが確認されました.紫外線量が多いことを期待して計測しましたが,全く逆の結果となり驚いております.以上をまとめると,私の家は,発生源と想定される森から遠く,電灯から発せられる紫外線量も少ないにもかかわらず,クワガタとカブトムシが大量に発生していると言えます.よって私は,以下の通り結論付けたいと思います.

 

怨念はおんねん(関西弁)

 

そこのあなた,失笑しないでください.もちろん怨念というのは冗談ですが,結局,我が家に沢山のクワガタとカブトムシが来てくれる要因はわかりませんでした.また機会があれば調査してみたいと思います.今回もここまで読んでいただきまして,本当にありがとうございました.最後に今年アパートで発見したクワガタ・カブトムシを図6に示します.

図6 発見したクワガタ・カブトムシの一部

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機友会ニュースデジタル版第104回 ロボティクス学科 松野 孝博 助教(平成24年卒)「蟲の怨念を調査」