理工学部ロボティクス学科の野方誠と申します.医用ロボット・機器・デバイス? の開発を主とした研究をしています.学修研究活動に必要な体力作りとメタボ解消にランニングを始め,今や年間5,6のフルマラソンに出るようになり,ランニングフォームに関する研究にも着手しています.

全く新しいタイプのマラソンレースをご紹介します.レース名は「WINGS FOR LIFE WORLD RUN」,後から来るキャッチャー(自動車)に追いつかれるまでに走った距離が記録となるマラソンレースです.世界各地の会場で同日同時刻に一斉スタートします.世界中のランナーが競走・共走相手になります.参加費の全額が脊髄損傷の治療法研究を支援するWings for Life財団に寄付されます.ランナーと車いすランナー,ビギナーとベテランが,走れない人たちのために走ります.

2015年,2016年の日本の会場は滋賀県でした.高島市今津総合運動公園がスタートで,北はマキノ町,南はJR近江高島駅付近まで行ってスタート地点まで戻る100kmのコースが用意されています.ランナーのスタート30分後にキャッチャーカーが時速15kmで追跡スタートします.徐々にスピードを上げ,最終的には時速30km以上に達します.キャッチャーカーに追いつかれずに完走するためには,100kmをキロ3分30秒で5時間30分走り続けなければなりません.最高記録は88.44km(Giorgio Calcaterra, 2016年),キロ3分44秒です.ちなみにIAU公認ウルトラマラソン100kmロードの世界記録は6時間13分33秒(砂田貴裕,1998年)です.現状では用意された100kmを走破するランナーは存在しません.

日本は午後8時スタート,暗闇の中を走ります.街燈,照明の無い走路がほとんどで,全員ヘッドライトを付けて走ります.ランナーのヘッドライトの続く長い列が,天の川のように輝きます.スタート会場では,世界全会場の様子が巨大スクリーンに映し出されます.どの会場で,まだ何人走っていて,世界トップは誰で,日本トップが何位かがリアルタイムにわかります.会場内で全世界のランナーを応援して,トップ争いを観戦して,ワールドチャンピオンを祝福します.世界が一つになる,スケールの大きいマラソンレースです.

このレースは,鬼ごっこをしているかのような楽しみがあります.スタートしてしばらくは鬼であるキャッチャーカーから逃げるように走る,捕まらずにずっと走って疲れてくると止めたくなり,また暗闇で一人で走っていると他の人は捕まって自分だけ取り残されているのかもと不安になり,キャッチャーが来てくれるのを期待しながら走る,追いつかれると捕まってガッカリ,終わってホッとする.子供のころの楽しかった遊びを思い出します.

フルマラソンなら誰もが42kmを制限時間内に走り切らなくては完走にはなりません.このレースは捕まった地点がゴールとなります.自分が走った距離のマラソンレースを完走したことになります.各々の走力に合わせた距離が用意されているマラソンコース,コースアウトしなければ必ず完走,気持ちよく走り終えることのできるレースです.

昨年は2016年5月8日(日),33か国,34の地域で開催されました.日本では滋賀県高島市,琵琶湖の西の畔を1,630人が駆け抜けました.全世界で男女130,732人が参加しました.参加料は約660万ユーロ(約8億6百万円)となり,全額(税引後)と同額がWings for Life 財団に寄付されました.男子ワールドチャンピオンは, Giorgio Calcaterra氏,88.44km,ワールドレコードがミラノ会場で生まれました.女子ワールドチャンピオンは吉田香織さん,65.78kmを4時間22分で走破しました.昨年のチャンピオンは渡邊裕子さんでしたので,2年連続で日本人が高島で栄冠を手にしました.

私は,2015年,2016年と連続して出場しました.去年の54.59km(3時間49分)を越えるべくペースを上げて走りました.20kmぐらいから立命館大学の女子長距離陸上部のランナー(日本会場女子3位)の居る5人の集団に追いつき,徐々に集団から遅れるランナーが出る中,50kmまでキロ4分00~10秒のハイペースで彼女と並走しました.疲労でふらついた時に足元が暗くて,2度転倒しました.ランニングフォーム,身体や路面の状態がリアルタイムでモニタリングできるウェアラブルデバイスが欲しくなりました.

他のランナーやキャッチャーの位置が分かるデバイスも欲しくなりました.関西テレビがこのレースの有力女性ランナーを取り上げた番組を作るべく,上位4名をカメラで追っていました.私が53kmまで来た時に,後ろから女子2位の渡邊裕子選手とカメラクルーが近づいてきました.去年の距離を越えるためにはここは抜かせないと,ペースを上げてしばらく前を走りましたが,55kmに来て去年を越えたので先に行かせました.その時はキャッチャーが間近に来ていたことを知らず,56km手前でようやく気づき,ラストスパートして,56.03km(3時間54分)でフィニッシュしましたが,55kmで先に行かせた渡邊裕子選手は300m先の56.37km地点でキャッチャーカーに追いつかれことをTV放映で知りました.もう1km頑張っていれば渡邊選手と一緒にレースを終える場面がTVで流れたのに,キャッチャーの位置が分かっていたら,他のランナーやキャッチャーの位置が分かるデバイスがあったらばと,相当悔しみました.企業の方には是非とも開発してほしいです.

残念ながら2017年は国内で開催されません.世界のランナーと楽しめる,日本では闇夜の鬼ごっこレース,一度参加体験して欲しいいので,来年は日本会場が復活して欲しいです.

 

 

機友会ニュースデジタル版 第4回 ロボティクス学科 野方誠先生「研究指導に必要な体力を鬼ごっこマラソンで培う」